絶好のチャンスを手に入れた、ウルトラトレイルランナーであり父親である、ヴィンセントヴィエさん

雪に覆われたフランスのクルーザー山脈で、父親が息を切らして「下山はどうする？」と尋ねます。2歳になる子供がリュックサックから、嬉しそうにくすくす笑いながらスキーの音をまねようとします。それから彼らは下山しますが、明らかに２人とも一緒に行うスキー体験が大好きです。

“「特別な瞬間です」と 、フランス人のウルトラトレイルランナーであり、2人の子供の父親でもあるVincent Vietは、新しいドキュメンタリー“Ultra Dad”で語っています。坂の下に着いたら、「もう一回！」と主張する息子のヴィクトルの心情だ 。

ヴィンセントにとっては、ただの楽しい家族旅行の一部ではなく、彼のトレーニングの中心を成しています。世界中のレースで優勝経験のあるアマチュアランナーとして、ヴィンセントは次の競技目標に向かって、彼が情熱をかけるスキー、ランニング、サイクリングを組み合わせることがよくあります。幼い息子をワークアウトに参加させることは、ウェイトトレーニングをより楽しくするものであり、親であることとトレーニング目標とのバランスを取るための優れた方法です。

「ウエスタンステイツエンデュランスラン100（カリフォルニア州での100マイルのウルトラトレイルマラソンレース）」に向けて２021年から2022年にかけてのヴィンセントの旅に焦点を当てた“Ultra Dad”は、このバランスを完璧に捉えています。「重要なことは、それを子供たちと共有することです」と、ウルトラトレイルランナーは言います。 

短編映画全体を通して、Vincentがレースに向けて、毎日のトレーニング過程で子供たちとどのように共にしていたかがわかります。たとえば家族が住んでいるアヌシー湖のほとりに沿ってベビーカーを押したり、トレーラーでサイクリングしたり、バックパックを背負って朝のスキーツアーに出かけたりしています。  

一般的に広く知られている「ウエスタンステイツエンデュランスラン100」は、ヴィンセントの究極の目標でした。「これは神話上のレースです」と妻のシャーロットはドキュメンタリーで話しています。「彼にとって、これは大きな挑戦だと思いますが、同時に素晴らしい冒険でもあります。」  

伝説的な米国の耐久レースは、カリフォルニア中の古い金採掘トレイルをたどり、100 マイルの山道、峡谷、冷たい川に沿って進みます。しかも6月の気温が上昇する中で。非常に挑戦的な地形ですが、毎年約10,000人の人々が熱望している300のスタート地点の1つを獲得しようとしています。  

ほとんどの参加者のエントリーは抽選ですが、そのためには前の年に世界的なレースに出場しているという資格が必要です。ただし、選ばれた少数の人にはゴールデンチケットというものがあります。別の有名なトレイルレースで優勝することで、「ウエスタンステイツエンデュランスラン100」への参加が保証されます。

2021年10月のフランス「エンデュランストレイルテンプリエ」の勝者が、米国の競合への入場を保証したことで、Vincentは地元のチケットを突然手に入れることができました。これは大きなチャンスでしたが、まず、フランスで最も古く、最も権威のあるトレイルレースであるテンプリエで優勝する必要がありました。そのコースは絵のように美しいワイン産地の周囲50マイルのコースで、非常に変化に富んだ地形で有名です。テンプリエを獲得するのは至難の業です。

「”ウエスタンステイツ” は私にとって夢でした」とヴィンセントは認めます。レース目標は彼の最大の動機であり、この機会に自分自身を失望させたくありませんでした。テンプリエでわずかな差をつけることができたことで、ヴィンセントは深く掘り下げる時が来たことに気づきました。「私は3つのエナジージェルを食べました」と彼は回想します。彼は10分の差でフランスのレースに勝利しました。 

ゴールデントレイルのUltra DAD（ウルトラ父さん）

「ウエスタンステイツ 100」に向けて準備を進めていたヴィンセントは、7か月以上前からレースに向けて準備する必要がありました。しかし、最も重要な課題は、体調不良と育児が優先されることが多い冬の間、集中力を維持することでした。シャーロットとヴィンセントは、2人ともコロナに感染したとき、2人目の子供を期待していました。その後、ビクターは病気になり、1週間入院しました。「困難な時期もありました」とヴィンセントは振り返ります。

この厳しい数か月間、トレーニングが後回しになったことは想像に難くありません。それでも、ヴィンセントは集中し続けました。「レースの準備をすることは、人生と同じです」と彼はビデオ通話で話したときに言いました。「自分のやってきたことを信頼してください。悪い時期にエネルギーを維持するのに役立ちます。」 

6月までの数か月間、このプロセスには週15～20時間のワークアウトが含まれていました。平日のランチタイムおよび/または夕方のワークアウト、そして週末には最大 7時間の山でのランニング。月曜日は回復のための日でした。Polarのスポーツマーケティングの仕事と併せ、この必要なトレーニング計画により、息子と過ごす時間はほとんどありませんでした。 

「シャーロットはヴィクトルの世話をしてくれて、私を大いにサポートしてくれました」とヴィンセントは言います。「彼女にはどんなに感謝してもしきれません」それでも彼は、運動の少なくとも20%、場合によってはさらに多くを息子と一緒に実施することができました。そのため、ヴィンセントはビクターをベビーカーやバックパックに乗せて、短いご近所ランに連れ出しました。その後、「ウエスタンステイツ100」の5週間前に、シャーロットとヴィンセントの２人目の子、長女サラが生まれました。 

「(レースは) 家族の目標でした」とヴィンセントは説明します。そのため、小さな乳児がいても、貴重な時間を一緒に体験するためカリフォルニアに旅行することは、彼らにとって非常に重要でした。ありがたいことに、シャーロットの友人は、この海外への旅に参加することで、彼らが切望していたサポートを提供してくれました。

6月25日の夜明けに、ヴィンセントは他の熱心な参加者と共にカリフォルニア州オリンピックバレーを出発しました。彼とシャーロットは、前夜に家族一緒に過ごせるよう手配していましたが、レース当日は、ルート沿いのエイドステーションの1つであるフォレストヒルでしか会えませんでした。

100 kmにおいて、フォレストヒルはこの重要な旅のちょうど中間地点にあります。順調に進んでいることに満足していたヴィンセントは、このエイドステーションに近づくと感極まって、シャーロットと子供たちとの再会に喜びのあまり涙を流してしまいました。「私は自分自身、とても気分が良かった…そしてこれは今も起こっていることなのです。」

家族を連れてくるということは、ヴィンセントがルート上の他のエイドステーションで彼を支援するサポートチームを派遣する金銭的余裕がないことを意味していました。このことが米国のライバルと比較して、時間がかかった可能性があると感じています。「（各エイドステーションで）ライバルの周りにはそれぞれ5人（のチーム）がいました」とヴィンセントはドキュメンタリーで客観的に分析しています。

サポートがあれば、これらの参加者はモーターレースのピットクルーの速さと効率で水のボトルや衣服を交換でき、各停止でわずか30秒しかかからないこともありました。「非常に感銘を受けました」とヴィンセントは回想します。ヴィンセントは、各エイドステーションのレーススタッフに事前に梱包されたバッグを渡しておき、自分自身で対応できるよう見にしたため、時間に余裕ができました。そして最後の30km、特に川の交差地点に到達したとき、ペーサー（サポーター）がいたからこそ達成できた感じています。「コース（そして彼ら）が私を後押ししてくれるとは知りませんでした。」 

それにもかかわらず、ヴィンセントは、米国で最も古く、競争力のある 100 マイルレースの上位 7 位以内に入っていました。レースの大部分で、彼は信じられない気持ちでした。「まるで夢の中にいるようでした」と彼は思い出します。「私のスポーツキャリアの中で最高の日の1つです。」 

そこには家族がいて、またプロセス全体を通して彼をサポートしてくれることは、ヴィンセントにとって不可欠でした。「私は一人では決して成し遂げられなかったでしょう。」子育て、仕事、トレーニングのバランスをとるというすべての課題がある中で、彼は「ウエスタンステイツ100」に再び取り組むでしょうか? 「やりたいです」とヴィンセントは認めます。「レース、ルート、準備方法を知ることで、まだまだ自分のレベルを向上させることができると確信しています。しかし一方で、今年はたくさんの思い出と感動がありました。また同じように感じるかどうかはわかりませんが、だからこそ、この素晴らしい気持ちを心に留めておきます。」